
T.T (taiga takahashi / タイガタカハシ) FW2025 COLLECTION

TAIGA TAKAHASHI
FALL WINTER 2025
私たちは「応用考古学」という考え方を通じて、ものづくりをしてきた。19 世紀後半のアメリカの成長を支えた労働者や、庶民がまとった一着一着をつぶさに観察し、当時の人々の営みに思いを寄せる。
その後の大量生産、大量消費で失われていく技術や、まだ手仕事が残る100 年前の衣服はタイムカプセルのように、私たちに語りかけてくれる。
本当のものづくりの価値は、歴史の中にすでに存在しているのではないか。
考古学的視点で蘇らせたT.T の衣服には100 年前の価値が宿る。
応用考古学とは、ただ再現を試みることではない。「過去の遺物を蘇らせることで、未来の考古物を発掘する」と髙橋大雅が遺したように、私たちは未来を見つめてつくる。そこに重ねられるのが、日本古来の美意識だ。
25AW では、生地の物語を扱う。
手描き友禅の技術で染め上げた墨模様の生地。職人が筆を動かす軌跡がそのまま見て取れる。
かつて米軍の患者がリハビリの際に着用したと考えられるマルーン色のメディカルジャケットは、茜と紫鉱による天然染色でその色を蘇らせた。
あるヴィンテージのコーデュロイには、まるでツイードのようなプリントが施されていた。高級感を醸すためか、遊び心か。理由は定かではない。
約100 年前に生まれた、異なる生地を模した柄に不規則性や不均一性という、日本の美意識に通づる感覚を見出した。
過去の遺物には、長い時間を耐え抜いた力が宿っている。私たちはこの力を衣服に憑依させ、日本の美意識で現代に蘇らせる。
過去に存在する価値を見つめ直し、100 年後へとつなげること。これは、T.T による応用考古学の実証実験である。